
【Op.000 A fandamental frequency 】
子どもの頃からこれさえあれば
他のすべてがなくなっても生きていけると
大切にしている宝がありました。
心がざわざわしたりチクチクしても
この宝があるから大丈夫。と思えました。
10代後半、宝にカタカタと罅(ひび)が入るようになり
その度にさみしい気持ちになりました。
20代半ば、大きな罅が入り、これ以上壊れないようにと
私は大切に大切に、それを抱えるようになりました。
それが、30代に入り、ガタガタと音を立てて壊れてしまい
私は必死にその欠片を集めて握りしめました。
ある時、壊れた欠片を持ち続けても仕方ないのではないかと思い、
いっそのこと捨ててしまおうとしましたが、
それでも修復する方法がどこかにあるかもしれないと諦めきれず
握りしめたままでいました。
その宝が2年前にサラサラと跡形なく
掌からこぼれ落ちていきました。
ショックのあまり、私は数日、起き上がれずに寝込んでしまいました。
ずっとこうしている訳にもいかないと思い起き上がってみると
目の前には満ち満ちた世界がありました。
これさえあれば何があっても生きていけると信じて
大切に大切にしてきた宝は、幻だったことを知りました。
* * *
これは、私の物語です。
そして、あなたの物語でもあります。
